仔犬
通勤途中、坂を上ったところに鉄を扱う工場があります。
そこには1匹の白いワンちゃんが飼われています。
そこで働く中年男性たちが、
ときどきそのワンちゃんを撫でてる様子を見て、
ほほえましく思っていました。
しかし、私にはその犬の性別は見分けがつかないでいました。
ただ、最近、おっぱいが目立ってきたので、
メスなのかなと思っていたら、
暖かくなり始めたある日、
3匹の仔犬が姿を現したのです。
白いワンちゃんは、3匹の仔犬の母親になっていたのです。
子どもたちの成長を待って、
小屋の外に連れ出したのでしょうか。
自転車であっという間に通り過ぎてしまう私は、
命の誕生にまったく気づいていませんでした。
3匹の仔犬が柵で囲まれた小屋の外に出るようになって、
3週間くらい経つでしょうか。
下校途中の高校生の男の子が長い時間、
仔犬たちを撫でていく姿をみます。
出勤前の男性が、
わざわざバイクを止めて、
仔犬たちを撫でていく姿をみます。
その姿は1回ではないのです。
当の私は、動物がちょっと苦手なので、
撫でるまでには至っていませんが・・・・。
仔犬もそうなのですが、
それ以上に男性たちのやさしい姿が、
ちょっと慌てていても、落ち込んでいても、
私の気持ちをまあるくしてくれます。
当たり前ですが、老若男女関係なく、
小さきものを愛おしく思う気持ちは、
湧き出てくるのですね。
その小さかったものたちが成長し、
羽ばたく卒業の季節を迎えています。
あらためて、過去に抱いた愛おしさを
思い出してみることも、
羽ばたく者と自分自身の背中を
そっと押しだす力になるのかもしれません。
仔犬にバイバイを告げ、
長い坂をびゅーんと下りながら、
マミータヤンバルはこんなことを考えたのでした。
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